2017年 8月 の投稿一覧

ヒグラシのなく頃に

夏の早朝や夕暮れ時に、私のお寺のすぐ近くの山から

「カナカナカナ…」

という、もの悲しい声が聞こえてきました。

言わずと知れた“ヒグラシ”の声。

子供の頃は、この鳴き声を聞くだけで「長い夏休みが終わりやぁ…」と思っては、浮かれていた心に、何となく淋しさが込み上げてきたものでした。

都会ではクマゼミのやかましい声を耳にしても、ヒグラシの鳴き声が聞こえることはありません。

 

はるか遠くに過ぎ去った少年の日の思い出の中で、そっと鳴いてくれているだけなのでしょうか?!

季節の移り変わりには、人の心を動かす何かがあるように思います。

 

冬から春にかけては、何かしら希望めいたものが。

春から夏には、どこか浮かれたものが。

夏から秋にかけては淋しさが。

そして秋から冬には、どこかしら覚悟めいたものが。

 

時の移り変わり、季節の移り変わり は、ときに「見てはいるけど観えていない」事柄に気づかせてくれることがあります。これは人の眼を現実へと向けさせるもので、諸行無常の世を実感させるものであります。

 

「カナカナカナ…」という鳴き声ひとつに、仏の声を聴く。

まだまだ真夏の空を見上げ、かなり早い秋の到来を実感している今日この頃です。

一年一度の主役

忙しいお盆の最後の行事に 地蔵盆 であります。

私たち僧侶にとって、この地蔵盆が来ると、

「いよいよ夏が終わるなぁ」と、季節の終わりと云うよりは、夏の一大行事の終わりを実感します。

普段、境内の地蔵堂は簡素なもので、取り立てて飾ることはないのですが、地蔵盆の際には、堂内も綺麗に飾られ、多くのお供え物によって、ただでさえ狭い空間が一段と狭く感じられるようになります。

普段のお彼岸やお十夜、施餓鬼といった行事は本堂のみで行われ、お参りの方々も、地蔵堂の中まで目を向ける方はあまり居られません。

 

しかし、この日ばかりはお地蔵さまが主役!

お寺によっては、幼い子供さんたちが、沢山お参りをされて、賑やかに過ごされるようです。

私のお寺でも、地蔵堂には切り子灯篭が吊り下げられ、夕方七時からのお勤めには、それに灯る明りが何とも美しく見えます。

ただ、この吊るされた灯篭は、この年に初盆を迎えた家々から持ち寄られたものなのです。そして本番では、子供たち以外に、このお家の方々がお参りになられ、美しく灯った灯篭を眺めながら、亡くなった家族の思い出とともにしみじみと夏を送る行事なのです。

 

はしゃぎまわる子供たちの中で、静かに佇む方々に、

「これでお盆は終わりましたよ。お亡くなりになった方々も、またお浄土に戻っていかれましたよ。きっとまた来年の夏に会えますよ。」 …そう言葉をおかけせずにはいられない行事なんです。

お地蔵さまはただ黙って、一年一度の主役を務めておられます。しかしその慈眼には、大人も子供も隔てなく、ただ仏の子に過ぎない姿に映っていることでしょう。

子供には楽しみを… 淋しい親族には心の安らぎを… そっと与えていらっしゃいます。

 

お盆は続くよ どこまでも

8月と言えば お盆 です

世間では会社も学校も皆お休み!

家族そろって里帰り、あるいはバカンスにと、日本列島は大移動の最中。

私たち僧侶は、檀家様や信者様のお宅を駆け回っております。

 

若い頃はさほど思わなかったのですが、最近は 特に体力の限界を感じていて、「今年は最後まで体がもつやろうか?」と、悲観的に考えてしまいます。

体だけではなく、自慢の声までもが保たなくなってきて、最近では、いつもの声量の三分の二くらいに落としてお参りをしております。

 

この時期、普段のお参りと違うのは、目に入るお坊様の数。

意識せずとも、信号待ちの交差点で、バイクに跨るお坊様を、必ずお見かけします。

「これだけのお坊様が、一体何処に隠れているのだろう?」

そう思うくらい、お会いする機会が増えるのです。

そして、みな一様に目が笑っていないのです。(これは私だけが思い込んでいるのか?)

 

「みんな大変やなぁ」

“自分だけじゃないんだ…” そう感じると、「よっ!ご同輩!お互い頑張りましょうな!」と、心の中でエールを送り、次のお宅へと向かいます。

 

年に一度、この荒行とも思える時期を越し、地蔵盆を迎えて、お盆の一連の行事はピリオドが打たれます。

「ああ、今年も何とかお盆が越せたぁ…」

スライム状態になった体で往く夏を思いながら、

「早よ息子に代替わりして、楽隠居しよ!」 そう心に誓うのです。

そういえば、ここ何年か毎年同じことを言ってるな。

「楽隠居」

この響きの良い言葉に勇気付けられ、今年もお盆に突入します。

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