時節

出世した猫

本日お参りから帰ると、誰もいない部屋のクーラーが つけっぱなしになっているではありませんか!

猛暑の中、涼しい部屋に入れることは、とても有り難いことではありますが、「家族が全員留守なのに何と勿体無いことを…! これは今夜にもしっかり注意をしなければいけないな」と思った瞬間、背後から「ニャァ〜」

飼い猫のサクラが足下にじゃれついてきました。

 

「ん!? このクーラーは猫の為にスイッチが入れられていたのか!?」

 

先日の「西日本豪雨」で、熱中症と戦っている方々が沢山おられるのに、何という贅沢なお猫様であろう。もしこれが猫ではなく、私だけだったら、恐らくはクーラーなど 入れてはもらえなかっただろう。

当のサクラが気付いているかどうかは別にして、こんな涼しい部屋なら わざわざ外に出かけていくことはまずあるまい。

 

サクラが我が家にやってきたのは、今から8年近く前のこと。

季節は晩秋11月半ばの冷たい朝でした。

「近くから子ネコの鳴き声が聞こえてるよ」と 家内が知らせてくれました。

「どうせ何処かの野良猫だろう」と しばらく放っておいたのですが、勘の鋭い家内は「どうも普通の鳴き方じゃないよ」と、私を急き立てて 猫を探しに行かせたのです。

案の定、子ネコは農業用の水路に落ちて、首だけを水面から出して 必死で助けを求めていました。

見れば まだ生まれて間もない子ネコ

さすがに放っても置けず、助け上げて、冷え切った体をバスタオルで拭いてやったのですが、子ネコは疲れ切っており、自力で立つことも難しそうで、仕方なしに近くの動物病院へ連れて行きました。

獣医さんに処置をしてもらい、少し元気が出てきたので 「連れて帰ったら 今夜にでも近くの神社に置いてこよう」などと家内とひそひそ相談しておりました。

 

ところが、帰り間際に獣医さんがネコの頭をなでながら、「お前良かったなぁ、いい人に拾われて…」とつぶやかれ…

 

今夜捨てられないやないですか!

 

お寺に帰ってからも、3人の子供たちが、ネコの名前を何にするかで口げんか。

とうとうこの子ネコは、我が家の家族となってしまいました。

 

先祖代々由緒正しい野良猫が、ジェリクルキャッツならぬお寺の飼い猫へと出世して、今では一匹の為に クーラーまでつけてもらえるなんて…

人間の私は、サクラを見るたびに、「一つあやかりたいものだ!」などと考えております。

 

梅雨のあとさき

今日も朝から雨が降り続いています。

と、言うよりも前日からずっとです。

 

台風7号がやって来て、そのまま雨が居座りました。

梅雨入りの直前に、家内は着物に風を通すため、三日がかりでタンスの着物の出し入れをし、バタバタと慌しく立ち働いていましたが、梅雨入りしてからは、雨の合間に庭の草引きを、わずかな時間を割いて頑張ってくれています。

 

私は、この時期になると裏の竹藪に、「はっちく」という種類の細い竹が伸びてくるので、これをカットする仕事を数日おきにやりながら、お盆の準備で経木塔婆をせっせと書いております。

 

この塔婆書きというものは、結構大変な仕事で、檀家さんのご先祖の戒名を、塔婆に筆で書きこんでいくのですが、枚数が千枚ほどになると、一気に書き上げるようなことができません。

とりわけ、戒名の文字を間違えるようなことがあっては一大事です。こちらにしてみれば、千枚の内の数文字であっても、各家々にしてみれば何枚かの塔婆の中の一文字なわけで、すぐに気が付かれます。また、戒名というのは、読みが同じ漢字が沢山あり、加えて同じ文字であっても旧字体で書かれているものはそのまま書いていかないと叱られたり致します。

 

そんな訳で、この作業もまた、一日に30分から1時間くらいと、集中力が持続する範囲で続けていきます。昨日、これも大きな山を越え、残すところ百枚程度となりました。

 

そろそろお盆の日程を立てて8月に備えるのですが、この時期になってくると、だんだんと気分が憂鬱になってきます。

年々 歳をとるにつけて、「果たして今年はお盆を越せるのだろうか!?」といった不安が強くなっています。

30代の頃には考えもしなかった衰えを自覚するにつれて、早く楽隠居をしたいと願うようになりました。

 

歳ですね…

 

大学の友人たちは、定年後の第二就職の話や、子どもの就職、結婚の話をするようになり、「まだまだ楽はできそうにない」とボヤいていますが、どこも同じなのでしょう。

 

今回は、愚痴のような、ボヤキのようなつぶやきになってしまいましたが、まだまだ私は頑張ります。雨で家に閉じ込められてしまうと、人間ろくなことを考えないものです。

こんな時は雨音を聴きながら、私は布教の原稿作成のための深い思索に入ります。

 

ではまた(^0^)/

風物詩

今年も蛍の季節がやってきました。

二日ほど前の夜、遅めに帰宅した我が家の長男が、「帰りに蛍が一匹飛んでたよ。」

 

「ああ、もうそんな季節か・・・。」

 

前にも書いたように、私のお寺は大阪の郊外、京都と奈良の境目近くにあります。

自然がそこそこ残り、この時期には、蛍も僅かながら舞ってくれます。

 

近くの田んぼには水が張られ始め、田植えも始まりました。

私はこの時期がとても好きです。夜になると、電車の明かりが水田に反射して美しく映え、昼間からりと晴れ上がれば、気持ちの良い風が吹きわたります。

 

今日は晴天、家内も朝から着物の虫干しをしております。梅雨に入るほんの少し前のこの時期に、寸暇を惜しんで着物を広げて、風を通しています。

 

季節の風物詩というものがそれほど見られなくなった現代。

こうしてそれを感じながら生活をしていられる私は、多分、心の中で随分な贅沢をさせてもらっているのでしょう。

それと同時に、今年もまた同じ風景に出会える喜びというものをしっかりと感謝していきたいものです。

来年、これと同じ光景を目にすることができるなんて、どこにも保証はないのです。

それこそ、淡い光を明滅させながら飛び交う蛍のように、人の命も儚いものなのですから。

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