早苗の季節が過ぎ、空気の中に雨のにおいが混じり始める季節。
太陽の季節がすぐ近くまで来ているというのに、越えなくてはならない鬱陶しい時期。
梅雨は私たちの心を何故か重怠くさせてしまいます。
そんなある日、傘をさして歩く道沿いに、今を盛りと咲き競う紫陽花の花を見つけました。
紫陽花には雨がよく似合う。・・・不思議なもので、「この雨は紫陽花の為に降り続いているのかも知れない。」・・・そんな事まで考えてしまいます。
長雨の時期、その時々に色を変え私たちの眼を楽しませてくれる紫陽花。
自然はこんな季節にもちゃんと私たちに素敵な楽しみを用意してくれているのです。
カタツムリ、そしてアマガエル。どれもみな雨が一番よく似合う。
雨が降りしきる中のカエルたちの大合唱。
傘を差し、急ぎ足で通り過ぎる私たちの傍らで、葉っぱの上を何とものんびりと進むカタツムリ。
「そんなに慌ててどこへ行くの?」
梅雨という季節は、私たちの普段のせわしない生活の歩調を少し緩めてくれ、身の回りの物事に眼を向ける時間を与えてくれているのかも知れません。
雨音は世間の雑音を消し去り、ひと時の静寂の中に身を置くと、今まで見えてこなかったものが目に映るようになります。
この長雨の間に早苗はみるみる成長して株を増やし、梅雨が明けるころにはもう地面が見えなくなっていることでしょう。
私たちもこんな時だからこそ、歩く速さを緩め、身の周りに目を向けて、素敵なことを見つけていっては如何ですか? (善)
(撮影:脇坂実希)