若草山の山焼き

先日、早春を告げる奈良の伝統行事、『若草山焼き』が行われました。

紆余曲折を経て、現在は1月の第4日曜日に開催されます。

この日若草山周辺は、大勢の見物人でにぎわいます。

近年は、外国の方の姿も非常に多い。

アジア圏だけでなく、おそらくアメリカやヨーロッパの方々も・・・

今年は天気もよく、例年より暖かかったように思います。

夕方6時にもなれば、辺りは暗くなり、

澄み切った冬の夜空には、たくさんの星が輝いていました。

 

『若草山焼き』は、長い歴史のある行事ですが、

実は、起源は定かではないようです。

山頂にある古墳の霊を鎮めるためや、

1月ごろに山焼きを行わないと良くないことが起こるという迷信、

また、東大寺と興福寺の領地争いを仲裁するためなどといわれています。

今は、春日大社、東大寺、興福寺の三社が習合し、

先人の霊魂の慰霊や奈良の防災意識を高めるため、

そして、世界平和を祈って行われております。

 

突然、ドーンと大きな音とともに、花火が打ち上がり、

大きな歓声が上がりました。

この花火にも鎮魂、また悪病退散の祈りが込められています。

次から次に打ち上げられる花火に、皆が見入り、

会場が一つになっていく。

 

花火が最高潮を迎えると、

一斉に火が放たれ、若草山が燃え上がっていきます。

冬の夜空を焦がすかのような炎は、何とも言えず幻想的で、

眺める人たちの顔を赤く染めていきます。

本当に美しい炎の祭典でした。

 

生まれも、育ちも、国籍も違う人たちが、

同じものを眺め、同じ時間を共有し・・・

もしかしたら、人と人が溶け合うことは、

本当は簡単なことなのかもしれない・・・

 

どうか世界が平和でありますようにと、

天に昇る炎に願わずにはいられないひと時でした。(光)

(撮影:脇坂実希)