在家伝法

その昔 御伝法は 僧侶の行法を組み直し 御本山大念佛寺において 特段のお檀家さんに対し 施されたのが始まりです

のちに その場は各末寺へと移り 末寺御檀家が行人となり 当初は七日間 現在は社会の実情を鑑み 主に五日間をもって開催されています

境内には 仏国土に入る為の波羅蜜行の御心を織り込んだ五色の幕が掛かり 大勢の僧侶に世話人さん 御導師さんのご家族・ご親戚など 多くのお力添えのもとで 御伝法は進んで行きます

平素はご住職 御伝法の間は御導師様 別け隔てなき心養うお髪剃りを終えた後には 行人皆さんの御師匠様として 御檀家の安寧とお寺の反映を願い 行人皆さんと一緒に行をお積みになられます

七段の塔を積むが如し

行人皆さんは御伝法を通じて 御導師様より 七つの偈文をお授け頂かれます

この中には念珠の持ち方や正しいお焼香の仕方 御供の御心なども含まれます

御伝法を通じて 平素のやり方を見つめ直す良き機会にもなります

この行の力に驚くことがあります

「お仏壇に前に座った事のないお父さんが 毎朝お線香を立て 鈴を打つようになった」「出かける前に お仏壇の前で「行ってきます」というようになった」「お仏壇とお墓の掃除が お父さんの仕事になった」など 御伝法の後 姿が変わったというお話を聞くことがあります

御伝法という特別な時間 独特な雰囲気は 意識せずとも 行人さんの胸を打つのです

行中は毎朝 「笹行」という一種の水行をお受け頂きます 慣れない行人さんに 僧侶から「こーですよ」と優しい言葉が掛かります

少しずつ互いにお顔が知れていき 段々と親しくなって…

御伝法は決して厳しいばかりではなく 一緒に満行を目指すもの同士 楽しく嬉しく過ごす時間でもあるのです

お釈迦様は「イキイキと行きなさい」 阿弥陀様は「私の名前を称えて 救い求めなさい」と 行人皆さんを包んで下さいます

80年 90年 100年と この世を生きる時間は長くもあり 一瞬でもあり…

されど歩いてきた道・時間を総括し これから目指す先・行く道が正しいものかどうか 見つめ直す機会を得ることは 難しいように思います

御伝法は 一度歩みを止めて 過去という「因」を観て 今足を置く場所を観て 未来にある「果」を想像する とても有意義な時間となるでしょう

満行の折 行人皆さんは 御導師様より巻物を授与されます

お釈迦様のお弟子となり お師匠様と師弟の関係を結び さらには融通念佛の輪に入り 人と人 人と一切と「仲良く」暮らす者としての証が巻物です

もとの生活に戻り お仏壇のお位牌をみて 「禅定門・禅定尼」という戒名を見つけたら その方はいつかの御伝法をお受けとなったお方です

自分の行法とご先祖様の行法を重ねて 「今 自分があるのはご先祖様のおかげ」と心結んで 自分もまた その意を継ぐ者として 心整え 「仲良く」の心を胸に歩み行くことが大切です

 

自分の歩幅で ボチボチ前進… (溪)

 

(撮影:脇坂実希)