まだまだ寒さが残る3月初旬の頃から御出向され
3月、4月、5月と河内の各在所をお回りし
5月29日ようやく無事に御本尊と供奉員が共に本山にお帰りになられます。
さて本山の南門の近くには長年営まれている散髪屋さんがございます。
散髪屋さんのご主人は毎朝、御回在で本山を出発する時に必ず居てくださり「いってらっしゃい、今日も気をつけてお参り下さい」と手を合わせ合掌のお姿で見送ってくださります。
御回在はお回りをする地域により本山を出発する時間が異なるわけですけれども、毎日の出発時間をお知らせはしておりません。朝の本山でのお勤めの鐘の音を頼りにそろそろ出発されると思い見送ってくださいます。
我々は何気なく日常生活を送っていますと、当たり前の事を当たり前に過ごしがちになります。
ですがこうして当たり前の日常生活もよくよく考えてみますと、周りの人や物に支えられ、助けられて生きているのではなかろうかと思います。
全ての物ごとが目に見え、支え、助けていただいているとそこに感謝の念を持ちやすいと思います。
しかし全ての物ごとが目に見えるわけではございません。
人の目につかない所でもたくさんの人に支えられいてるからこそ我々は当たりまえの日常を送れているのではないでしょうか。
御回在も御本尊だけでは回ることはできません。
御本尊と共に供奉されている方々や、そして、御回在を受けて頂く末寺の御住職、また待ってくざさっているお檀家のみなさんと、たくさんの人や物に支えられて約400年もの間続けてこられていることに、感謝の心を忘れてはいけないのが仏様の教えではなかろうかと思います。
こうして、散髪屋さんのご主人の合掌の姿でお見送りを受け続けながら、これからも御本尊が
各地をお回りし続けられるでしょう。
そしてこの散髪屋さんのご主人のお姿が
私には仏様に見えているのであります。(竣)
(撮影:脇坂実希)