蔵出し

令和7年4月下旬。菩薩役の手によって「蔵出し(くらだし)」が行われました。

蔵出しとは、万部(まんぶ)法要の準備として、一年間菩薩様の面や衣体、持物や御道具を収めていた蔵から出す作業のこと。

菩薩役とは、万部法要にて菩薩来迎の練り供養を担当しておられる、融通念佛宗の中でも特別な僧侶方たちのことです。

 

「よろしくお願いします!!」

まだまだ冷たい雨の降る中、揃えの黒の作務衣を着た菩薩役の僧侶たちは大念仏寺に集合されました。

 

流れの確認や注意事項から作業にうつります。

本堂改修工事中なので、収めている場所も運び出す先も例年とは異なります。

歴戦の菩薩役の方々が丁重に蔵から運び出します。さらには強くなる雨足。

雨に濡らさないよう細心の注意を払います。

また若い新人も先輩方の姿に倣い、率先して懸命に取り組みます。

菩薩役ならではのチームワークが格好良いです。

 

そうして運び出した先には、御道具がずらりと並びます。その光景は壮観そのもの。

しかしホッとする間もなく菩薩役の方々は御道具の点検を始めます。揃っているか。傷んでいる部分はないか。「それこっちやで!」穏やかな空気がピリッと引き締まります。

平素から時機に応じて虫干ししたりと管理を欠かさないそうです。

「これが大事なところや」「これが菩薩役の仕事なんや」と、長老様が誇らしく語られます。

そうして皆の力が合わさり、ついには蔵出しが完了します。続いては動作の最終確認。

まだまだ準備は続きます…。

 

一年を通して、さらにはこれまでの何十年何百年も続けられて来た作業の先に、ついに令和7年5月の万部当日をお迎えできる。一日だけれども一日ではないのだな…。

 

「参詣の方々に御来迎のお姿を目の当たりにしていただき、お手を合わせて、安心を得ていただけたら何よりです」と優しく菩薩役長は語られました。

 

銀杏(いちょう)散らしの袈裟姿(けさすがた)

老いも若きも手を引いて

さっさ参ろよ 法(のり)の山

さっさ参ろよ 法(のり)の山

 

5月1日より5日までの万部法要、是非お参りくださいませ。南無阿弥陀仏。(夏)

(撮影:脇坂実希)