寒行

季節は冬、朝もまだ明けていない中にも、白く凍った息が街灯に照らされ、まるで生き物のように揺らめいて見える。

降りしきる雪の中、ただ前を見つめ、裸足に草鞋履きで托鉢に進む僧侶たち。

寒さ厳しい時期に見かけるその姿に、思わず立ち止まって手を合わせてしまいます。

一年で一番寒いと言われるこの時期は、僧侶たちにとって最も大切な修行の時期。托鉢にまわる事もその大切な修行の一環です。

寒行とは、24節気の小寒から節分までのひと月の間に行う修行を言い、寒さ厳しい時期に行うことで、大変な苦行ではあるものの、そのことで沢山の功徳があるとされています。

滝に打たれたり、托鉢にまわったり、本堂でお勤めしたり、座禅を組んだりと、様々な修行がありますが、一般人ならあまりやってみたいとは・・・思いませんよね?!

誰だって辛いことやしんどいことは避けたくなるものです。

ですが、こうした目に見える苦行とは異なり、私たちの普段の生活の中にも様々な目に見えない苦行が沢山あるのではないでしょうか。

寒行とは少し離れますが、一人前の僧侶になるためには、やはりそれなりに修行を積まねばなりません。その中には冬の時期に水を被ったりすることも勿論あります。

ただその時に感じるのは、冷たい水も一気に被ればそれほど冷たさを感じることはなく、むしろ体が火照って温まってくるということ。

どんなことにも実際に飛び込んでみないと判らないことが沢山あり、ただひたすら寒さに同化して歩んでいくことで寒さを越えた境地に至ることもできるのではないでしょうか。

街の何処かで寒中托鉢に進む僧侶の姿を見るたびに、「貴方たちも、苦しみから逃れようとせず、そこに頭から飛び込んでみなさい。きっと浮かぶ瀬がありますよ。」・・・そう教えていただいているような気持ちになるのです。

総本山大念佛寺では、2月3日に寒中托鉢で平野の地を回られます。もし貴方の前を進まれることがあったなら、どうか静かに手を合わせ、自分の姿を歩まれる僧侶たちに重ね合わせて、共に修行をする同行同伴の心で見送っていただきたいと思います。(善)

(撮影:脇坂実希)