大和御回在は季節の移り変わりを肌で感じながら回ります。
ご出光の9月初めは残暑厳しい中を汗だくになりながら。
10月に入ると黄金色に実った稲穂とその刈入れの最中を少し涼しくなった風を頬に受け。
11月には山々が美しくお洒落をし、吹く風に少し冷たさを感じながら。
そして12月に入ると袖口から入る風の冷たさに、ブルブルッと体を震わせ、襟元を抑えながら歩を進めます。
長かった大和御回在ももうすぐ御帰院です。
この時期になると、在所に到着するころはまだ陽も高く昇らず、刈り取られた田んぼには白く朝霜が降りていて、迎えに来て下さっているお寺の役員の皆さんも冷たくなった手を擦りながら私たちの到着を待っていてくださいます。
寒さが増すほど暖かさは心に沁みてくるもの。
迎えていただく家々で、仏間を温め、暖かいお茶を振る舞っていただき、
「寒くなりましたなあ。」
「今年ももうちょっとですなあ。」
「一年は速いですなあ。」
そんな会話をしながら、人の心の温もりに触れて、
「ああ、御回在っていいものだなあ。」
・・・そんなことをしみじみと感じます。
3月に始まり5月末に終わる河内御回在、9月に始まり12月に終わる大和御回在。1年の内のほぼ半分をどこかの在所で鐘を鳴らしながら足早に進む姿は、その昔念仏勧進に諸国を経巡られた聖の様であり、また托鉢に進まれる禅僧の様でもあり、御仏と人々の心を結ぶ僧侶としての本来の姿がここにあるのではないでしょうか。
今年もあともう少し、如来さんも御帰院まであともう少し。
白い息を吐きながら、カランコロン・・・下駄の音と、カンカンカン・・・鐘の音を響かせながら今日も私たちは在所をめぐります。(善)
(撮影:脇坂実希)