みなさんのお住まいには、お仏壇がございますでしょうか。
融通念佛宗でしたら、お仏壇の内がわ、向かって左側に、「法明上人(ほうみょう しょうにん)」という方の絵が、かかっているかも知れません。
この方についての、とても面白い読み物があります。「法明上人幻想(ほうみょうしょうにん げんそう)」といいます。
「法明上人幻想」は、奈良は徳融寺の阿波谷俊宏(あわたに しゅんこう)師の豊富な知識と文才また長期にわたる根気等によって書き上げられた、史実をもとにした創作物語です。
法明上人は、およそ700年も昔のこと、第六世ののち140年近くも途絶えていた融通念仏の法灯を引き継ぎ、教えを再び世の中に広められました。
そんな法明上人ですが、正直、宗門の檀家さま方におかれても、あまり法明上人のことを知らない方も多いのではないかと私は思います。
その一因として、我々は知りたくても知りにくいということがあげられるのではないでしょうか。法明上人のことが書かれている、大昔に書かれた「亀鉦縁起」あるいは「三租略伝」などは、スラスラと書かれた達筆を読み取ることすら難しい。
また「歴史上の人物」となると、つい遠い存在のように感じて、人物像まで想像が及ばない。私がそうなのですが、そんな人は多いのではないでしょうか。
最初にあげた「法明上人幻想」は、まさにここをたすけてくれる、名文なのです。ページをめくる手がドンドン進んでいく。
司馬遼太郎の「竜馬がゆく」。手塚治虫の「ブッダ」。テレビの大河ドラマ。小説なりマンガなりと媒体はことなるものの、歴史的な人物は、創作があってこそ身近に感じ人物像を知る、という経験は多くの方にあるでしょう。
巡り巡らされた人物同士の関係性、また奇遇な出会いなど、史実と時には想像を巡らせ、法明上人の生涯を描き切った大作です。
この「法明上人幻想」ぜひ手に入れて読んでいただきたく存じます。(※)
書かれた阿波谷師、この方もまた、すごい人物なのです。宗派の隆興において果たされた業績は数知れずあり、また素晴らしい経歴をお持ちです。
タイムリーなこととしては、この夏に融通念佛宗の新聞「大念仏」は第100号を迎えますが、その新聞が創刊する前には「大念仏時報」という白黒の新聞がありました。
こちらの大念仏時報の創刊号において、昭和38年、当時の管長猊下やその後の管長猊下など錚々たる上人さまたちとならび、若き日の阿波谷俊宏師は、既に経本の解説という1コーナーを担当しておられました。
それから60年あまりが過ぎた今も現役で、近年も「絵解き融通念仏縁起」「知ってよかった仏教三十話」(※)を出版され、また奈良の月刊誌など各方面に文書を掲載されるなど、素晴らしいご活躍をなされています。
法明上人のお姿を想い阿波谷上人のお姿を目の当たりにしますと、尊崇の気持ちが湧き上がります。
続いて自分の力不足をこれでもかと思い知ります。
でも、それだけでは勿体ない。
我々も少しでも、続けますように。(夏)
南無阿弥陀仏。南無阿弥陀仏。
(※)大念仏寺にて販売していますが、在庫に限りがあるためお求めの際はお問い合わせください。
「法明上人幻想」は、融通念佛宗総本山大念仏寺発行の「法明上人 その生涯と信仰」という本に収められています。
(撮影:脇坂実希)