太陽の光が木々の若葉に反射し、息をするのも苦しくなるような5月、京都は大原にある来迎院は新緑を湛えた木立の中にひっそりと佇んでいます。
観光客で賑わう三千院の横、塀と小川に挟まれた坂をしばらく登れば、少し年季の入った山門が見えてくる。門を潜ればそこが来迎院の受付です。
ここ来迎院は、賑わいを見せる三千院とは異なり、静けさの中。
鄙びたお堂に一歩入れば、そこには薬師如来を中心に、阿弥陀如来、釈迦如来がお祀りされており、その前に座れば時間の過ぎるのを忘れ、ただただ頭を空っぽにして仏様との心の対話が始まります。
ゆっくり、深く呼吸して、自分を見つめ、来し方行く末を考えるのも良いだろう。
切なる願いを仏様に託すのもまた良い。
ここはそんな対話ができるところです。
春、皆が待ち望んだサクラの時期。初夏の若葉の時期。雨が幻想的な空間を作り上げる梅雨。きつい日差しにセミの鳴き声が暑さに輪をかけてくる夏。木々がお洒落をして本堂の周りに彩を添える秋。そして、寒さが境内を白と黒に染め分け、仏道修行の厳しさを垣間見せる冬。来迎院は一年を通して味わい深く、私たちを迎え入れてくれます。
来迎院は、融通念仏宗開祖である聖応大師良忍上人が創建された寺院。本堂から奥に向かって細い道を辿っていくと、良忍上人のお墓もあり、私たち布教師会でも毎年御廟参拝は欠かしたことはありません。
良忍上人の生きた時代は、「鳥すら通わぬ」と言われたほどの山深い場所でしたが、車やバスで行けるようになった現代においても、京都市街からはほど遠い事には変わりありません。
そんな大原に住まれて、ひたすら念仏修行に励まれた良忍上人のご苦労に、ただただ頭が下がる思いです。
コロナ禍でここ3年ほどは少人数で参拝していましたが、今年こそは布教師全員がそろって参拝したいと考えています。大原来迎院は私たち融通念佛宗の檀信徒にとって心の故郷でもあるのです。(善)
(撮影:脇坂実希)