蛍の光

卒業式で誰もが歌ったことのある「蛍の光」。

 

「蛍の光窓の雪~」と意味も考えずに歌っておりましたが、この際、折角なので調べてみました。

 

まずは「蛍の光」。

 

これは「晋書(しんじょ)」と言う中国の晋の時代の歴史書に書かれた車胤(しゃいん)と言う政治家の伝記が基になっています。

 

車胤は、とても勤勉で学問を怠るようなことがなく、あらゆる文献に広く通じていました。しかし家は貧しく、夜にも勉強を続ける為の燭台の油もなかなか買う事が出来なかったので、夏になると練り絹の袋に蛍を集めて入れ、その明かりで勉強をつづけたそうです。

 

蛍がかわいそうな気もしますが、努力を惜しまない姿は私も見倣いたいと思います。

 

では「蛍の光」の歌に続く「窓の雪」はどこから来たのでしょう。

 

『孫氏世録(そんしせいろく)』という書物に、孫康(そんこう)という人は、家が貧しく灯油がなく、いつも雪明かりに照らして読書した。という伝記が書かれており、このことを唐の時代の李翰(りかん)が書いた『蒙求(もうぎゅう)』と言う教科書の中に、車胤が蛍の光、また孫康は窓の雪明かりで、それぞれに勉学に励み努力したことが列記され、これを元に「貧しさに耐えて学問に専心すること」を意味する「蛍雪の功」ということわざになったそうです。

 

どちらも貧しさをバネにして努力することの大切さを説いてくださっているのですね。

 

ただ、便利を追求して開発に開発を重ね、蛍の光をみる余裕さえもなくしてしまっている現代。

 

どんなに世の中には物が溢れても、心の貧しさを解消できていないのではないでしょうか。

 

利便性の追求で蛍のすみかを奪い続けてきた私たちです。何だか申し訳ない気持ちになってまいりました。

 

無いから作るのではなく、あるもので済ませよう、という考え方も大切にしないといけないことを、この歌詞は今の時代に教えてくれているのかもしれません。

 

余談ではありますが、お店が営業を終了するときに必ずと言っていいほど流れる「蛍の光」と思っているあの曲。

 

実は「六甲おろし」の作曲者で有名な古関裕而氏がスコットランド民謡の「オールド・ラング・サイン」と言う曲を3拍子の曲として編曲した「別れのワルツ」と言う曲名なんです。

 

つまり、あの「蛍の光」のメロディーは「オールド・ラング・サイン」というスコットランド民謡が原曲なのだということです。

 

色々な時代の色々な人の歴史がつながり、日本では卒業式の曲として歌っている「蛍の光」。

 

三月に歌う歌詞としては不思議だなぁと思っていた曲は、どこまでも不思議なご縁によって出来上がった曲だったのでした。

ご縁ってやっぱり大切ですね。(洋)

(撮影:脇坂実希)