「めちゃくちゃ冷えますな」とお迎えしてくださるおうちの方。仏間は前もって温めて下さっているようでホッとします。お線香の煙は低く、壁より部屋の中央へ流れてみえます。
バイクで回るお参りはなかなか冷たいものです。それでも若い頃は寒さなんてへっちゃらとばかり、わりと薄着でまわっていたものでした。
少し歳をとり、手袋をつけるようになりました。そうすると、少し暖かくなるのです。
手首足首をおおうカバーをつける。
マフラーを巻く。
マスクで口鼻をおおい、目を守るゴーグルをかけます。少し暖かくなります。
バイクのハンドルを温めるヒーターというオプションをしつらえてもらい、とても暖かくなります。
とはいえ、もちろん寒い。
「心頭滅却すれば火もまた涼し。これ、逆もそうなのかなぁ。その境地は遠いなぁ。」と実感します。さらには、仮に心頭滅却できたとしてバイクの運転は大丈夫なのだろうか、などと考えだす始末。心も冷えているようです。
口はガチガチ震え、指先は感覚がなくなってきます。履き物はもとよりキンキンです。
そういうときに暖かく迎えてくださる喜びは格別です。暖かさというのは、寒いからこそ味わえるのでしょう。心も温もってまいります。
おうちの方が準備をととのえお待ちくださりお迎えして下さる、ありがたい日々。我々は心を洗っていただいている思いがします。そんな冬のお参りです。
南無阿弥陀仏。南無阿弥陀仏。(夏)
(撮影:脇坂実希)