一年一度の主役

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忙しいお盆の最後の行事に 地蔵盆 であります。

私たち僧侶にとって、この地蔵盆が来ると、

「いよいよ夏が終わるなぁ」と、季節の終わりと云うよりは、夏の一大行事の終わりを実感します。

普段、境内の地蔵堂は簡素なもので、取り立てて飾ることはないのですが、地蔵盆の際には、堂内も綺麗に飾られ、多くのお供え物によって、ただでさえ狭い空間が一段と狭く感じられるようになります。

普段のお彼岸やお十夜、施餓鬼といった行事は本堂のみで行われ、お参りの方々も、地蔵堂の中まで目を向ける方はあまり居られません。

 

しかし、この日ばかりはお地蔵さまが主役!

お寺によっては、幼い子供さんたちが、沢山お参りをされて、賑やかに過ごされるようです。

私のお寺でも、地蔵堂には切り子灯篭が吊り下げられ、夕方七時からのお勤めには、それに灯る明りが何とも美しく見えます。

ただ、この吊るされた灯篭は、この年に初盆を迎えた家々から持ち寄られたものなのです。そして本番では、子供たち以外に、このお家の方々がお参りになられ、美しく灯った灯篭を眺めながら、亡くなった家族の思い出とともにしみじみと夏を送る行事なのです。

 

はしゃぎまわる子供たちの中で、静かに佇む方々に、

「これでお盆は終わりましたよ。お亡くなりになった方々も、またお浄土に戻っていかれましたよ。きっとまた来年の夏に会えますよ。」 …そう言葉をおかけせずにはいられない行事なんです。

お地蔵さまはただ黙って、一年一度の主役を務めておられます。しかしその慈眼には、大人も子供も隔てなく、ただ仏の子に過ぎない姿に映っていることでしょう。

子供には楽しみを… 淋しい親族には心の安らぎを… そっと与えていらっしゃいます。

 

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