私のお寺の釣鐘は 毎朝6時に鳴らします
それもラジオの時報に合わせてつく為 こんなに正確な釣鐘はありません
あまりに正確すぎて「全自動鐘撞き機で釣鐘を撞いているのでは!?」などと疑われたこともあります
いえいえ 完全手動ですが…
数日前の朝のことでした
最初の鐘を鳴らしてすぐに 山門から一人の女性が境内に入って来られました
そして釣鐘堂に立つ私を見て「あら、本当に撞いてはる」
どうやら朝の散歩で歩いておられる方のようでした
「せっかくだから お一つ撞いて見られますか!?」
そう申し上げると、「え、いいんですか!?」と言いながらも
やる気満々でやって来られ「どうぞ」と私が促した途端 力一杯に釣鐘を撞かれました
真横にいた私の耳の鼓膜が破れるのではないかと思うほどの音でした
これで気が済んだのか 釣鐘から離れて 今度は私が撞くのをじっと見ておられました
私が撞くと そのあまりにもの音色の違いに 今度は感心され
「ああ、そうやって打つんですね!」と仰ったのです
私の音色は 丸く包み込むような音色になります
決して大きくはなく 耳に響きすぎることもありません
強く打てば強く響き 優しく打てば優しく響く…
当たり前のことですが 人間にとってこれほど難しいことはありません
誰もが大きく鳴らしてやろうと意気込むものです
そして本当にいい音色というものは 聞いている人の耳に心地よく響くものなのです
当たり前のことですが 釣鐘の音色は撞くたびに少しずつ異なってきます
全く同じ音色を出すことはできません
それは晴れの日 曇りの日 雨の日…
そして春夏秋冬によっても異なってきます
「上手く撞けた!」そう思えることはなかなかありません
ですが 毎朝の日課として 1日のスタートにこの釣鐘を聴いている人の耳に心地よく響いてくれるように いつも心がけて撞いています
そう釣鐘一つにも奥深いものがあるのです