一匹の猿と家内

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この時期になると思い出すことが一つ

もうかれこれ三年くらい前になるかと思います

朝 家内がお寺の裏手に洗濯物を干しに行ったと思ったら 慌てて帰ってきました

「猿がいてるっ!」

一瞬 何のことか理解できずに 「へっ?」

「猿、サル、さる~!」

「人の顔を見て 猿 サル 言うなっ!」

「違うねん 裏の柿の木に猿がいてるっ!」

とりあえず裏に行ってみると 確かに一匹の猿が 柿の木から美味しそうな実を一つ手に取って 逃げていくではありませんかっ!

見ているうちに 近くにあった電信柱に スルスルっとよじ登り 下で騒いでいる私たちを高みの見物

「さすが猿だけあって電柱に上るのは上手やな」

感心して眺めていると 私の横から家内が猿に向かって 「う~っ、う~っ」

「あんた何を言ってるの?」と言うよりも早く 電柱上の猿が 「ウッ、ウッ、ウッ」

「あぁ… 猿もちゃんと会話ができるんや… いやいやいや! あなた いつから猿と会話ができるようになったん?」

「いや 何か反応があるかなぁ~と思って」 私の家内は 面白い発想をする人ですその発想と行動が やや単調になりがちな家庭生活に 今までに無かった色合いをもたらしてくれました

「これは当分笑えるな」

猿はそのまま電線伝いに逃げていきましたが 一匹の猿にとった家内の行動に あらためて人間の生活の中には「一服の清涼剤がとても大切なんだ」ということに気付かされました

結婚して四半世紀は経ちましたが、私は全く退屈をしておりません

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