数日前のこと 朝5時を回ったころのことでした
本堂の裏手でカラスが集まって うるさく鳴いておりました
丁度 本堂で朝のお勤めの準備をしていて その声が余りにうるさかったものですから 何気なしに窓から外を覗いたところ、一匹の野良犬らしき動物がカラスとにらみ合っておりました
茶色の姿は とてもやせ細っており 顔に至っては ナイフでそぎ落としたような鋭さ
「んっ!」
まさかと思い尻尾に眼をやると 思った通り犬では考えられない太さと長さ
狐がカラスたちと睨み合っていたのです
「まだこの辺りにもいたんや!」
ちょっと感動!
タヌキはちょくちょく見かけることがありますが 狐は本当に数十年ぶりの事
むしろ最近は ハクビシンやアライグマといった外来の動物が 近くの畑を荒らしまわっているという話が多く日本古来の動物が隅っこに追いやられているような思いもしていたのですが いやあしぶとく生きていますねぇ
しばらく睨み合った後 狐はお寺の裏にある竹藪の中へと消えて行きました
「狸は化ける。狐は化かす」
なんてことを言いますが 狐の顔を見たとき 何とも狡猾そうな顔つきだったのを思い出し「う~ん 狸の顔は愛嬌があるけれど 狐のこの顔ではやっぱりペットにするには怖すぎるなぁ…」
油揚げで飼いならそうという気にもなりませんでした
ここで思い出した言葉「狐と狸の化かし合い」
これは 人間同士の騙し合いなどに使われる言葉でありますが 考えてみれば狐や狸のような動物よりも 人間の内面の方が余程怖い面を持っているのかもしれません
自分の心に狐のような顔があるとしたら ちょっと怖い気がします
どんな人にもそのような一面があるのだとするなら 私はできれば狸のような愛くるしい一面を持っていたいです
そのうちに「古だぬき」などと呼ばれたりするかもしれませんが…