数日前のこと 檀家様のお茶菓子にいただいた醤油せんべいを噛んだところ 奥歯が傾いてしまいました
「んっ!!」
その時は何とか誤魔化して帰ってきたのですが その夜から食事を取るのにもかなりの苦労をする始末
意を決して翌日 歯科医の友人のところに電話してすぐに診てもらいました
友人曰く「もう処置するには方法は一つやな」
私「やっぱりダメ!?」
友人「そら よく持ったほうでしょ」
渦中の奥歯とは私の口の中に残った ただ一つの乳歯だったのです
私が生まれた時からずっと 一緒に生活してきた歯が無くなることは とても寂しいことなのですが これも止むを得ないこと
ふつうは小学生くらいの時に生え変わるはずの奥歯が 一本だけ永久歯が無かったため そのまま生え変わることなく 60年もの間 私の口の中に存在し続けていたのです
上手くすれば死ぬまで乳歯を使い続けられるかと思っていたのですが やはり寿命が来たというものなのでしょう
結局その日に抜歯してもらい 後日治療をすることになりました
それにしても よくもまあ60年もの間よく持ったものです
先月還暦の誕生日を迎え それと前後して最後に残った乳歯も定年退職となった次第 ここまで丈夫な歯に生んでくれた親に感謝です
で… 今は歯の抜けた跡がなんとも言えない状態です 食事の時も反対側の歯で噛まなくてはならず つくづく「あるべきものが有るべきところにある」という有難さを実感しているところです
“歯が抜けて 初めて噛み締める”
という言葉があります。
有るべきものがちゃんとそこに在るという有難さは なくなった時に初めて気づくものなのですね
私たちは「あたりまえ」という奇跡にどれだけ感謝しているでしょう
一本の永久歯が無かったために本来無くなっているはずの乳歯が ずっと私の口の中で永久歯の代わりをしてくれていたという事実に 素直に「ありがとう」の気持ちを持ったのでした